心に響く生演奏届ける

2007年05月16日
発行:日経MJ掲載記事
客の要望巧みに探る
心に響く生演奏届ける
還暦のお祝いで主役があいさつを終えた途端、クラシック音楽が生演奏で鳴り響く「サプライズ」の贈り物――。個人宅やレストランへの演奏家派遣サービスで事業を拡大しているエルパ(東京・江東、渡辺悠子社長)。同社で顧客と演奏家の仲介をとりまとめるのが、浜田真理子さんだ。大切な記念日や音楽に対する両者の思いをくみ取ろうと日々、工夫を凝らす。  仕事は顧客からの電話やメール依頼で始まる。演奏家派遣は自宅での個人レッスンや幼児向けの音楽ベビーシッターもあり、月間五―六十件を手掛ける。大規模なパーティーなどでない限り、顧客と顔を合わせて打ち合わせる機会はあまりない。  どんな顧客が何を求めているのか。ゲストの年齢層や会合の目的、会場のイメージなどを電話で聞き取りながら、耳を澄ませるのが客の声の後ろで聞こえる家庭の雰囲気だ。
 特にベビーシッターの場合、母親の話方でわかる部分もあるが、どんな子どもなのかを知ることが重要。 「少しぐずっている声が続いているから、歌遊びの得意なAさんに頼もう」。 約四千人いる演奏家の登録名簿から性格の合いそうな人を繰り出す。 選曲も顧客の満足度を大きく左右するポイントだ。もともと音楽に精通しているわけではない浜田さんは、毎朝十五分の社内勉強会でクラシックの曲が生まれた背景やオペラで登場する場面の意味などを調べていく。 携帯する音楽プレーヤーにはジャズや邦楽も含め、六百曲を詰め込んで聞き歩く。 選曲リストを示した際、顧客に曲調を問われて電話口で口ずさむことも。 「最近は団塊世代の退職祝いが目立ち、(選曲候補の)さだまさしを歌って感心されました。」 録画した歌番組やレンタルCDで最新のJ-POPをチェックし、登録者の出演コンサートに足を運んで曲目と生演奏の魅力を耳で覚える。 日ごろの積み重ねが選曲の提案力を支えている。 入社まもなく、六人いたスタッフの半数が同時期にやめてしまった。春先で個人レッスンの申込みが増える書き入れ時。スタッフの採用を進めながら、徹夜続きで山積の案件をこなした経験が「たとえ3日前の依頼でも何とか乗り切る自信になった」。 就職活動でブライダル業界を探すうち、エルパに出会い、顧客も音楽家も喜ぶサービスに魅力を感じた。2000年設立の同社で大黒柱となり、今後は首都圏外への営業拡大に意欲を燃やす。「人見知りの子供が音楽を通じて変わっていくのが楽しい」と、9月に都内で小中学生向け無料コンサートを開く予定だ。